「第12回 王道トーナメント」【準決勝・優勝決定戦】9月15日(月・祝)後楽園大会詳報&試合後コメント
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全席完売となった「第12回 王道トーナメント」の準決勝・優勝決定戦が行われた後楽園ホール大会。展示場スペースには、長尾一大心選手を偲ぶ献花台、写真パネルやメッセージノートが設置された。献花台は、2025年12月31日までの各大会会場に設置される。
大会開始の午前11時30分から追悼式が執り行われた。選手、スタッフがリングを囲み、宮原健斗が遺影、鈴木秀樹が遺骨を抱いてリングに上がると、追悼の10カウントゴング。新土裕二リングアナウンサーが「赤コーナー、170パウンド、長尾一大心」とコールすると、満員の客席から拍手と一大心コール。遺影と遺骨は本部席へ。今大会に出場した選手は、長尾選手のコスチュームカラーである緑色のテープを手首や腕に巻いて、試合に臨んだ。

〈第1試合〉
アジアタッグ選手権試合 60分1本勝負
【第126代】青柳優馬 青柳亮生 vs MUSASHI 吉岡世起【挑戦者組】

チャンピオンチーム・青柳兄弟は、6.15京都大会でライジングHAYATO・安齊勇馬組を破り王座戴冠。兄弟でのアジアタッグ戴冠は、勢いに乗る弟・青柳亮生は、8.10松本大会で吉岡世起を破り、世界ジュニア王座も獲得し二冠チャンピオンとなった。8.16町田大会で青柳兄弟とむーちゃんせーちゃんの間に遺恨が勃発。MUSASHIが二天一流で亮生から3カウントを奪うと、青柳家を恨む吉岡がアジアタッグ王座挑戦を表明し、デビュー15周年を迎えたMUSASHIは、9.23立川大会で世界ジュニア王座に挑むことも決定した。前哨戦では、優馬と吉岡が互いのフィニッシュホールドをオマージュするなど、熾烈な戦いが繰り広げられ、アジアタッグ選手権を迎えた。
亮生とMUSASHIの顔合わせで試合開始のゴング。ハイスピードバトルで一気にボルテージを上げると、亮生がドロップキックをズバリ。因縁の優馬と吉岡も激しい火花を散らす。むーちゃんせーちゃんはキックのコンビネーションから「盛り上がっていこうぜ!」とシャウト。負けじと王者組もダブルのタックルで兄弟の絆を見せつける。MUSASHIがエクスプロイダーで流れを引き寄せると、吉岡が串刺し攻撃からサッカーボールキックを2連発。追撃を狙うと優馬がリングの下から足を引っ張り、完全オリジナルの新必殺技「吉岡世起のいぬ間に」(吉岡のクラッシュドライバーと同型)の体制。未遂に終わっても串刺しエルボー、クロスボディを畳みかけた。再び「吉岡世起のいぬ間に」を狙ったが、吉岡は決めさせずエルボー合戦。吉岡は完全オリジナル新必殺技「青柳優馬の目の前で」(優馬のロックスターバスターと同型)の構え。抵抗されてシザースキックを放つと、優馬もブレーンバスターを決めて譲らない。再び亮生とMUSASHIの対戦。ハイレベルな先の読み合いからMUSASHIがフットスタンプ、顔面ドロップキック。亮生はむーちゃんせーちゃんの合体技を切り崩し、ケブラーダを発射した。兄弟の連携から亮生がロコモーション式フィッシャーマンズ・スープレックス。ハンドスプリング・レッグラリアット。優馬がロックボトム。さらにダイビング・エルボーをグサリ。ムーンサルトプレス。カウント2。ならばとファイヤーバードスプラッシュを放ったがMUSASHIは剣山で待ち受けていた。すかさず吉岡が亮生に「青柳優馬の目の前で」。優馬が助けに入ってもトルベジーノで排除した。MUSASHIは二天一流へ。叩きつけられる前に逃れた亮生が丸め込み。ラ・マヒストラルでも3カウントが奪えない。串刺し攻撃をかわされると、むーちゃんせーちゃんがキックでサンドイッチ。吉岡の雪崩式フランケンシュタイナー、MUSASHIのエストレージャフトゥーロが炸裂。亮生が驚異の粘りを見せても、最終兵器・二天一流を爆発させて完全決着。因縁の青柳兄弟を破ったむーちゃんせーちゃんが1年ぶりのアジアタッグ返り咲きを果たした。
<むーちゃんせーちゃんバックステージコメント>
吉岡「見たか。むーちゃんがやってくれたぞ。憎き青柳家を滅ぼしてやったぞ」
MUSASHI「大丈夫?なんか目が怖いんだけど。もう試合は終わったから。勝ったからな、オレら。落ち着いてちょっと。怖い怖い」
吉岡「ヤツらを、ヤツらを料理してやった」
MUSASHI「だからもういい、大丈夫。終わったから。勝ったんだ、オレら。見て。ベルトを手に入れたよ、オレら。落ち着こうまず。いつものせーちゃんじゃない、これは。危ない。戻りな控え室。頭冷やそう。怖いって怖いって。気をつけて気をつけて。開けて開けて開けて。怖い怖い怖い」
吉岡「青柳家…(1人で去っていく)」
MUSASHI「あんなせーちゃん見たことないよ。というわけで、むーちゃんせーちゃん再びアジアタッグ獲りましたよ。ここからまたアジアタッグチャンピオンとしてのむーちゃんせーちゃんの物語が始まっていきますよ。そしてね、オレは前を向いて、しっかりプロレスラーとして胸を張って今後も戦い続けます。ありがとうございました」
<青柳兄弟バックステージコメント>
優馬「すまない」
亮生「すいません。あぁクソ!ヤバいよ。松本に帰れないよ、これじゃあ」
優馬「クソ、悔しい」
亮生「防衛回数何回だ?」
優馬「0」
亮生「やった。完全にやった。あぁクソ!」
優馬「ある意味、記録樹立だよ。クソ!」
亮生「次だ。青柳亮生に残されているのは、もうこれ(世界ジュニア)しかないんだよ。これは立川で。今日の前哨戦では散々獲られた。いや、ジュニフェスでもメチャクチャ獲られてる。状況は最悪だ。でも、そこを乗り切る。見せてもらったからな。オレも負けねぇよ」
〈第2試合〉
王道トーナメント 準決勝 時間無制限1本勝負
宮原健斗 vs 関本大介

王道トーナメント準決勝・1試合目は、歴代最多3度目の優勝を狙う宮原健斗と初出場・関本大介の一戦。関本は2016年の「チャンピオン・カーニバル」で初優勝を果たしており、公式戦では関本が必殺のジャーマンで宮原を撃破。カーニバル後、宮原は三冠ヘビーのベルトをかけて関本とのリベンジマッチに臨み、雪辱を果たしている。シングルでの戦績は、3戦して1勝1敗1引き分けと五分。
ゴング直後、宮原が健斗コールを発生させたが、関本がお構いなしに突進。短期決着を狙い、串刺しタックル、ブレーンバスター、セントーン、ボディプレスを畳みかける。カウント2で返した宮原が場外に逃げても追撃を仕掛け主導権を握った。リングに戻ると、シュミット式バックブリーカーから逆エビ固め。なんとかロープエスケープした宮原は、チョップを喰らいながらも、ドロップキックの連打で応戦。追撃を許さない関本は、ボディスラムからダイビング・ボディプレス。回避した宮原がブラックアウトを直撃させるが、関本もラリアットで前に出る。バックの取り合いから宮原が一瞬の隙を突いたサムソンクラッチ。関本は肩を上げることができず3カウント。レフェリーに猛抗議する関本だが判定は覆らない。勝負タイムは5分7秒。宮原が3年ぶりの優勝へ王手をかけた。
<バックステージコメント>
関本「あぁ!クソ!オレの夏が終わっちまったクソ。チクショー。なんだよ、2で返しただろ。クソ、悔しいな。オイ、いつかやり返してやる。これじゃ挫けないぞ」
〈第3試合〉
王道トーナメント 準決勝 時間無制限1本勝負
綾部蓮 vs 本田竜輝

本田竜輝と綾部蓮は昨年の優勝決定戦を争い、綾部がデスルーレットで熱戦を制して初優勝。今年のチャンピオン・カーニバル公式戦(4.23後楽園)でも、綾部がデスルーレットで勝利している。本田は2年連続で決勝進出も優勝を逃している。
ロックアップから綾部がロープに押し込み本田の頭を撫でる。今度は本田が押し込んで、反則カウント1・2・3・4!タックル合戦を制した綾部がコーナーに詰めて重いエルボー。本田も負けじと前に出たが、真正面から受け止めた綾部は場外に投げ捨てた。鉄柵にスローしてビッグブーツを叩き込まんとしたが、かわした本田が奇声と上げて突進。リングに戻り、スリーパーでスタミナを削ると、ブレーンバスターの体制。耐えた綾部はボディスラムで叩きつけ、串刺しバックエルボーからランニング・ネックブリーカー。本田が激しく抵抗してもフルネルソンバスターで黙らせる。ドロップキックをクリーンヒットさせると、一気にデスルーレットを狙ったが、本田がブレーンバスターでリバース。渾身のラリアットでねじ伏せた本田は、ファイナルベントを敢行して3カウントを奪取。綾部の2連覇を阻止して、3年連続の決勝進出を決め、優勝決定戦のカードが宮原vs本田に確定となった。
<バックステージコメント>
本田「決勝、宮原健斗。オレが絶対に勝って、全日本プロレスに新しい風を吹かせてやる!王道トーナメント2025、優勝するのはこのオレだ!」
綾部「本田竜輝の爆発力に負けた。言い訳はないよ。王道トーナメント2連覇というのは、そう簡単ではなかった。ただひとつ、負けて言うのもなんだけど、本田竜輝との戦いは、負けて言うのも本当になんだけど、楽しいっていう感覚が強いな。戦っていきたいな」
〈第4試合〉
8人タッグマッチ 30分1本勝負
デイビーボーイ・スミスJr. “ミスター斉藤”土井成樹 黒潮TOKYOジャパン 立花誠吾 vs 大森北斗 羆嵐 井上凌 小藤将太

デイビーボーイ・スミスJr.&”ミスター斉藤”土井成樹&黒潮TOKYOジャパン&立花誠吾vs大森北斗&羆嵐&井上凌&小藤将太という異色の8人タッグマッチ。土井、黒潮、立花は、9.23立川大会のGAORA TVチャンピオンシップ・バトルロイヤルを控えている(王者は他花師)。ご機嫌な黒潮はイケメンコールを浴びながらたっぷり時間をかけて入場。リングに上がると4日前に獲得したばかりのストロングスタイルプロレス・レジェンド王座のベルトをゼンチニファンに見せびらかした。
先発の立花と井上は真っ向勝負を展開。“イケメン”黒潮と“ナルシスト”北斗の対戦では、北斗のナルシストポーズに嗚咽した黒潮は、近づいていくとまさかのキス。動揺した北斗の動きが止まり、スミス組が連続トレイン攻撃を仕掛ける。スミスが滞空式ブレーンバスターを決めると、黒潮がムーンサルトプレス。カットが入りカウント2。その後も北斗のローンバトルが続いたがRKOで反撃。タッチを阻もうとするアップタウンコンビにもまとめてRKOを決めた。スミスに襲い掛かった羆嵐がアルゼンチンバックブリーカー。抜け出したスミスは河津落としで応戦する。OSWの小藤が土井にミサイルキック。北斗組が連続串刺し攻撃を決めると、北斗軍スペシャルを宣言。北斗のみが餌食となり小藤も果敢にトライ。しかし、小藤のみが叩きつけられる。黒潮と立花がトペ・コンヒーロで共演すると、土井が奮闘する小藤を逆エビ固めで捕獲。超満員の観衆が声援を送ったが、土井がリング中央に引き戻しギブアップで決着となった。
<スミス組バックステージコメント>
スミス「ナガオサン、あなたのファインティングスピリットを感じました。今日、あなたが我々を勝利に導いてくれました。ナガオ、アリガトウゴザイマス」
土井「今日は組んだよ。上手くいったかもわからんけど、次23日。GAORA選手権、バトルロイヤル。全員敵やから」
立花「あれって1人しか勝者いないんですか?」
土井「全員チャレンジャー。他花師に挑戦やから、バトルロイヤルで」
黒潮「オレはな、オメエのこと仲間だなんて1回も思ったことねえよ!」
土井「いやいや、オレも思ってへん、オレも思ってへん」
立花「こんなコスチューム着て。オマエ、これでどこが仲間じゃねえんだよ」
土井「あ、そっちチーム2人。もしかして協力し合う感じ?」
立花「オレはそういうつもりだったけど。だって、各々そうだろ。北斗軍は北斗軍で、斉藤ブラザーズは斉藤ブラザーズで、オレたちアップタウンはアップタウンだろ」
黒潮「あとは(レフェリーの)緒方か」
立花「緒方は敵なのか味方なのかわからないけど」
黒潮「まぁいいか。とにかくこれ(レジェンド王座)に続いて、オレはGAORAを…」
土井「オイオイええもん、持ってるな。すげぁな」
黒潮「ストロングスタイルプロレスのミスター・ストロングスタイル、黒潮TOKYOジャパンです」
立花「嘘をつけ、オマエ。どこがミスターなんだよ、オマエの」
黒潮「今日からオレはストロング黒潮を名乗ります」
土井「オイオイオイ、どこ行くねん。オイ。置いてくなよ。とりあえず立川でGAORA獲るからな、オレが」
<北斗組バックステージコメント>
北斗「こういう形で今日を迎えることになるとは誰も思っていなかったし、オレも正直言ってぜんぜん実感はできてないよ。あいつのことを思い出すとな、あいつは常に笑顔だったんだよ。常に笑顔のあいつしか思い出せないから、正直言ってまだ実感するのには時間がかかる。だけどさ、あいつしかいないよ。やっぱロビーでさ、オレと羆嵐が飲んでる時によ、みんな変なヤツを見る目で、なんならゴミを見る目で見てくるようなヤツもいるのに、あいつだけは笑顔でさ、オレに『僕も一緒に飲んでいいですか?』なんて言うんだよ。だからみんな、あいつのことが本当に好きだったんだよ。そして小藤がこの前、長尾の火葬の時に、他団体なのに1人だけ来てくれたんだよ。これは言葉で言えるほど簡単なことじゃないと思うよ。他団体しかいないところで、自分で日時を聞いて、1人で来るというのは思っているより言うほど簡単なことじゃない。それをやってくれた小藤には北斗軍として、全日本プロレスとして感謝していきたいと思う。そのうえで立川。アップタウン、オイ、アップタウンだけじゃない。斉藤ブラザーズのセニョール斉藤とミスター斉藤もいるな。その上で他花師のGAORAを落とさせるわけにはいかないんだよ。北斗軍が一丸となって、ワンチームとなって立川のGAORAを防衛する、それだけだ。今日は本当にありがとう」
羆嵐「将太、大丈夫か?いいぞ、しゃべって」
小藤「オレはあいつの代わりにはなれないかもしれないけど、これからもあいつのライバルとして、あいつはオレの心の中で永遠に生き続ける。いつだってオレを鼓舞してくれる存在、それが長尾一大心です。全日本ファンのみなさん、そして全日本プロレスのみなさんに1つだけ聞きたいことがあります。彼が、長尾一大心が愛したこの全日本プロレス、僕も愛していいですか?」
羆嵐「おう。いいよ。オマエがあいつの分もよ、背負って戦っていくんだよ。なぁ」
小藤「これからも、この全日本プロレスで全力で戦っていきます。ありがとうございました」
羆嵐「なんか今日、長尾が亡くなって実感がなかったんだけど、お骨を見て本当にあいついなくなっちまったんだなって思って。言葉になんなくて。あいつが入門した時から、オレもまた全日本に出るようになって、いろんな思い出が意外とあって。ホントに言葉にできない、いろんなことがありすぎて。あの若さで、もっとやりたいこともあっただろうし。でもこんなことになっちまって。オレは所属じゃないけど、あいつがもっと生きたかった、やりたかったプロレスラーの人生、その一部をオレも背負って、この先、戦っていきたいと思います。長尾!オレはお前のこと忘れねぇぞ。これからもよろしくな」
井上凌「じゃあ同じチームとして自分が最後に喋りますけど。自分は説明が下手なんで、あんまりきれいにまとめることができないですけど、ちょっとありのままに全部話したいと思います。長尾とは同じ全日本プロレスの合宿所で去年の4月から一緒に住んで、一緒に練習して、一緒にちゃんこ食べて。練習とか移動とか、ほぼあいつとつきっきりじゃないけど、いろんな先輩が教えたりとかして、僕が一応、近くにはいたんで、本当にいろいろ教えてたつもりなんですけどね。僕的に長尾一大心って人間は本当に強いと、みんなが思う以上に思っていて。だから今回のこともあったけど、長くはかかるけど、絶対帰ってくるって。絶対あいつはまた強くなって帰ってくると思ってたんで悔しい。だけど、長尾は本当に3ヵ月頑張ってきたと思うんで、僕は絶対絶対、僕も長尾の存在、絶対忘れたりしないんで。俺も長尾のことをしっかり心に留めて戦いたいと思います。長尾、また会おう。じゃあな」
〈休憩時間明け〉
休憩時間明け、会場ビジョンで11.22後楽園大会から開幕する「世界最強タッグ決定リーグ戦2025」の出場チーム・第1弾を発表。世界タッグ王者の鈴木秀樹&真霜拳號、ザイオン&オデッセイ、大森北斗&羆嵐、MUSASHI&吉岡世起、宮原健斗&デイビーボーイ・スミスJr、綾部蓮&タロース、6チームの出場が明らかになった。残りの出場チーム、ブロック分けは、10.22後楽園ホール大会で発表される。
〈第5試合〉
世界タッグ選手権試合前哨戦 バカの時代 vs HAVOC 6人タッグマッチ 30分1本勝負
鈴木秀樹 真霜拳號 佐藤光留 vs 芦野祥太郎 ザイオン オデッセイ

鈴木秀樹と真霜拳號は、8.3大田区大会で宮原健斗・青柳優馬組を破り、世界タッグ王座奪取に成功。王道トーナメントで秀樹は、オデッセイと対戦も屈辱の1回戦敗退。芦野祥太郎がザイオン&オデッセイの世界タッグ王座挑戦をブチ上げ、9.23立川大会でのタイトルマッチが正式決定となった。
バカの時代vs HAVOC、最初で最後の前哨戦は、いきなり真霜とオデッセイが対峙。オデッセイが怪力を発揮すれば真霜はローキックで応戦した。佐藤光留が助太刀すると、オデッセイはまとめて弾き飛ばしていく。秀樹とザイオンは壮絶なエルボーのラリー。試合開始から5分が経過。ザイオンがヘッドバットを叩き込むと、秀樹もお返し。ザイオンはローリングエルボー、秀樹はヒザ蹴りも放ち、打撃戦はさらに白熱。助けに入ろうとする芦野を制止したザイオンは、天をあおいで再び秀樹に立ち向かう。10分経過。両者一歩も引かず5分以上打ち合うと、ヒザをついたザイオンに秀樹がエルボーで進撃。倒れ込むようにエルボースマッシュと放つと、大の字になったザイオンに覆いかぶさり3カウントが入った。倒れたまま抱き合った秀樹とザイオン。秀樹は何やらザイオンに語り掛ける。ザイオンは秀樹の腕を上げ勝者を称えた。リングを下りると、肩を組んで本部席の前へ。長尾選手の遺影と遺骨に触れてからバックステージに下がっていった。
<バカの時代バックステージコメント>
秀樹「なにやってたんですか?助けに来てよ」
真霜「イヤ、もうすごかったです。ザイオンもすごかったし、秀樹さんもすごかった」
秀樹「なんで先にオレ言ってくれないんですか。そういうところがましもんって言われるところですよ」
真霜「えぇ、ちょっと。知ってんすか?それ」
秀樹「知ってます。佐藤光留さんって人から、あっ、佐藤光留さん」
佐藤「イヤ、僕は言ってないですよ」
真霜「イヤ、絶対言ったでしょ」
佐藤「イヤイヤ、言ってないです、言ってないです」
秀樹「じゃあ、そういうことで。頑張るぞ、タイトルマッチ。頑張るぞ」
佐藤「やる気あるのか?」
秀樹「しょうもないっすね。はい、どうぞ」
――追悼式では遺骨を抱いてリングに上がったが、それを経てどんな思いで試合に臨んだ?
秀樹「いつも通り。いつも通りで上がらないといけないなと思いますね。ただ、なかなかこたえましたね。疲れました、ここ1週間ぐらいは。非常に疲れました。長尾一大心のせいですね。あの野郎のせいで。まぁ後輩ですから、面倒見ないといけないので」
――最後は本部席の遺骨の前に行きましたが?
秀樹「ザイオンが泣いちゃったから、もう行くしかないですよね。まぁ、なんですかね。あんまり言葉がないですね。急だったから、なかなか言えることもないし。ただ僕はね、たぶんこういうことを言うと、一大心は喜ぶと思うんで。くだらない見出しをつけるクソマスコミはぶっ飛ばそうと思いますね。バーカって言ってやりますよ。オマエらなんか取材させねぇよ、バーカって」
<HAVOCバックステージコメント>
ザイオン「タイシン、ありがとう。キミは永遠にオレの兄弟だ。そして今、オレたちは世界タッグ王座に挑戦する。HAVOCは世界征服のためにここにいる。オレたちこそがHAVOCだ。3・2・1!」
3人「HAVOC!」
芦野「長尾、またな」
〈第6試合・セミファイナル〉
6人タッグマッチ 30分1本勝負
斉藤ジュン 安齊勇馬 ライジングHAYATO vs 諏訪魔 田村男児 野村直矢

7月から欠場していた安齊勇馬は当初、9.23立川大会での復帰を予定していたが、今大会で復帰。三冠チャンピオン・斉藤ジュン、かつてアジアタッグを一緒に巻いた元パートナー・ライジングHAYATOと組み、諏訪魔&田村男児&野村直矢という新旧Evolutionトリオと激突した。
6.18後楽園大会以来の試合となる安齊は、先発を買って出てリングの感触を確かめるように諏訪魔とじっくりやり合う。HAYATOが高速ロープワークから田村にヘッドシザース。場外ダイブと見せかけ、バク宙からPunkポーズ。諏訪魔が背後から襲い掛かり大ブーイングを浴びたが、場外でも暴走してHAYATOを痛めつけた。劣勢が続いたHAYATOは、野村に起死回生のドロップキック。安齊が飛び込んでフロント・スープレックス。野村もスピアでやり返す。続いた諏訪魔が荒々しいラリアットからバックドロップ。安齊がジャンピング・ニーを放っても、もう一度ラリアットを叩き込んだ。ジュンと田村の対戦へ。番狂わせを狙う田村が猛攻を仕掛け、HAYATOと安齊の合体ブレーンバスターをリバース。目まぐるしい主導権争いが展開される中、HAYATOは田村に619のようなムーブから突き刺すスイングDDTを決め、場外の野村にスワンダイブ式プランチャ。孤立した田村だが、ラリアットを何発も打ち込み、ヘッドバット。しかし、ジュンが倍返ししてチョークスラム。自力で返した田村だったが、ジャックハマーが決まっては3カウントを聞くしかなかった。
<ジュン組バックステージコメント>
ジュン「DOOMしてやったぜ。これから上で本田竜輝と宮原健斗がやるな。間違いなく勝ったほうがオレに挑戦表明してくるだろうから。まぁ、関係ない。誰が来てもこのベルトを必ずオレが守ってやるぜ。DOOM!」
安齊「久しぶりのプロレス、久しぶりの後楽園、復帰ができてめちゃくちゃうれしいっていう純粋な気持ち100%にはなれないですね。オレの初めての後輩でした。成長を見守っていて、一緒にふざけて、一緒に頑張っている後輩でした。クサいセリフかもしれないけど、オレたちが長尾のことを忘れなければ、ずっと長尾はオレたちの近くにいると思います。オレはここまでのプロレス生活、一切下を向かずに、常に上を向いて歩いてきました。今回も時間はかかるかもしれない。すぐには上を向けないかもしれないけど、必ず上を向いてプロレスしたいと思います。そうしないと、後輩に笑われちゃうんで。今日はありがとうございました」
HAYATO「今日、最後に使ったDDT。あの技を考えたのはオレじゃない。天国に行っちゃった長尾一大心が道場でいつもオレと一緒に練習していた技。世に出せなかったけど、でもオレがこの技を使い続ければ。オレが使い続ける限り、みんなその技を見て、長尾一大心を思い出して。ありがとう」
<諏訪魔組バックステージコメント>
諏訪魔「試合では負けたけどさ。なんかこの関係性っていうのも懐かしさがあるな。野村、元気でやってたかよ、オマエ」
野村「お久しぶりです」
諏訪魔「おぉ、オマエ絶対戦ったらベルトいけると思うよ、オレ」
野村「ありがとうございます」
諏訪魔「オメェもだよ」
田村「頑張る、頑張る、みんな頑張る。前に進む」
諏訪魔「特に2人には頑張ってもらわないと。ベルト見せてくれよ、オマエ」
野村「はい。ありがとうございます」
田村「頑張ります」
諏訪魔「今日組めた意味っていうのは、後々なんか出てくると思うんだよ。それがまたプロレスの楽しいところだと思うんでね。ただ、今日は長尾のために戦ったわけだから。そこだけは忘れなければね。しっかりまた長尾のために、これからも頑張り続けたいと思います。今日はありがとうございます」
〈第7試合・メインイベント〉
王道トーナメント 決勝戦 時間無制限1本勝負
宮原健斗 vs 本田竜輝

“秋の風物詩”王道トーナメントを締めくくる優勝決定戦では、3年ぶり3度目の優勝がかかった宮原健斗と3年連続の決勝進出、3度目の正直で初優勝を狙う本田竜輝が激突。今年のチャンピオン・カーニバル優勝者決定トーナメント準決勝(5.18大田区大会)でも対戦している両者。その時は宮原が横十字固めで3カウントを奪っている。
決戦のゴングが打ち鳴らされ、健斗コール、本田コールが飛び交う。ヘッドロックを極められた宮原がロープに振ると、本田が強烈なタックルをお見舞い。そのまま場外戦に突入して、本田が気迫の攻めで主導権を握る。「長尾に届けるぞ!」と叫ぶと、鉄柵に押し付けて反則カウント1・2・3・4!が飛び出した。宮原も頭突きで打撃音を響かせ徹底応戦。リングに戻ると、ドロップキックをキャッチした本田が逆エビ固め。猛烈な串刺しラリアットが決まると宮原は前のめりに崩れ落ちた。エプロンでスリリングな攻防が繰り広げられ、息を吹き返した宮原がパイルドライバー。本田は場外カウント9でリングに生還。チャンスとばかりに畳みかけた宮畑は、串刺しニーから雪崩式ブレーンバスター。叩きつけられた本田だが、すぐに起き上がりスピアで特攻。もう一発狙うと宮原がカウンターのフロントハイキック。それでも本田は立ち上がりエルボーをフルスイング。宮原も打ち返していくと、素早くバックを取った本田がジャーマンからスピア。ラリアットが空を切り、宮原は関本を破った丸め込み。本田が肩を上げてもブラックアウトで襲い掛かる。シャットダウン・スープレックスは不発となり、本田が飛行機投げ固め。カウント2.9。ロープへ走ってのラリアットでも仕留められず、ファイナルベントでフィニッシュを狙う。抵抗した宮原がブラックアウトをズバリ。もう一度ラリアットでねじ伏せた本田は、今度こそファイナルベント。勝負ありかに思われたが、宮原は執念でキックアウト。さらに、ラリアットを被弾しながらも、本田の腕を固めてクラッチすると、シャットダウン・スープレックス・ホールド。観客の大合唱と共にスリーカウントが入り、宮原が3度目の制覇を成し遂げた。
マイクを握った宮原は、「王道トーナメント優勝したぞ!」と喜びを爆発させると、何度も涙を拭って長尾選手への想いを吐露。「一大心はこの全日本プロレスのプロレスラーであることに誇りを持っていました。だから僕たち全日本プロレスは、一大心が誇った、この全日本プロレスのリングをさらにキラキラしたものにしていくんだという気持ちで前を向いていきます」と話し、「プロレスファンのみなさんにひとつお願いが。プロレスラー・長尾一大心のことを胸の中に思い出して、日々を過ごしていただければうれしいです」と伝えた。
「これからも一大心の気持ちを一緒に、また明日から一緒に前に進んでいこうと思います。やっぱり一大心にとってカッコいい先輩でいなきゃダメだと思うから」と決意を明かし、「斉藤ジュン出て来いよ」と三冠チャンピオンを呼び込んだ。「9月23日、秋のビッグマッチ、東京・立川、覇者vsチャンピオン、オレたちの全日本プロレス見せようじゃねぇか」と宣戦布告すると、ジュンは「その挑戦、喜んで受けるぜ。だが、このベルトは絶対にオレから離れることはない。宮原健斗、DOOM!」と挑戦を受諾して退場。チャンピオンが去ったあと宮原は、「長尾一大心が愛した全日本プロレスをこれからも応援よろしくお願いします」と客席に呼びかけ、「全日本プロレス、そして長尾一大心、最高」と長尾選手に捧げる最高締め。遺影を持って優勝カップと共に記念撮影に応じると、会場は一大心コールに包まれエンディングとなった。
<リング上のマイク>

宮原「王道トーナメント優勝したぞー!一大心のことがあり、僕ら全日本プロレスのレスラーは、みんな一大心の気持ちをそれぞれのレスラーが今持っていると思います。一大心は北海道釧路から、このプロレスのリングに夢を見て上京して……(言葉を詰まらせる)。ただ、一大心はこの全日本プロレスのプロレスラーであることに誇りを持っていました。だから僕たち全日本プロレスは、一大心が誇った、この全日本プロレスのリングをさらにキラキラしたものにしていくんだという気持ちで前を向いていきます。プロレスファンのみなさんにひとつお願いが。プロレスラー・長尾一大心のことを胸の中に思い出して、日々を過ごしていただければうれしいです。僕たち全日本プロレスのレスラー、写真、スタッフは、一大心を一員だと思っているので、これからも一大心の気持ちを一緒に、また明日から一緒に前に進んでいこうと思います。やっぱり一大心にとってカッコいい先輩でいなきゃダメだと思うから。よし。まだまだオレら進んでいく。次の試合は9月23日、秋のビッグマッチ、東京・立川だ。オイ、チャンピオン、斉藤ジュン出て来いよ」
*ジュンがリングに上がる。

宮原「オレたちは長尾一大心の気持ちと一緒に前へ進む。そして9月23日、東京・立川、秋のビッグマッチ、覇者vsチャンピオン、オレたちの全日本プロレス見せようじゃねぇか」
ジュン「その挑戦、喜んで受けるぜ。だが、このベルトは絶対にオレから離れることはない。宮原健斗、DOOM!」
*ジュンは退場
宮原「最後に一言、長尾一大心が愛したこの全日本プロレスをこれからも応援よろしくお願いします。最後に会場のみなさんに聞きたい、全日本プロレス、そして長尾一大心、最高ですか?全日本プロレス、そして長尾一大心、最高」
<バックステージコメント>
宮原「王道トーナメント優勝だ。さぁ今日はこのリングに立つにあたって、どんな気持ちでリングに立てばいいか、分からないままこの会場に来た。リングに立てば何か見えるかなと思って。やっぱ悲しいよな。ただ、オレたちはプロレスで出会った仲間だから。リング上で何かを表現していて、一大心の気持ちとか、そういうものは全日本プロレスのレスラーがそれぞれの心に想いを持つものだと思うから。ファンのみなさまも一大心のことを心のどこかで日々思ってくれたらうれしいなと思って、リング上でああいうことを言いました。やっぱりでも、一大心はプロレスのリングに夢見てたし、全日本プロレスのリングに誇りを持っていたから。誇りを持っているその場所を、オレたちはもっともっとキラキラしたものにしていく、していかなきゃと思って、前に進むって決めました。そして、今日は王道トーナメント優勝して、次は9月23日、秋のビッグマッチで斉藤ジュン、覇者vs王者。9月23日、秋のビッグマッチでオレたちの全日本プロレスを見せてやろうと思う。あのベルトを懸けてだ。以上です」
本田「王道トーナメント、これで3年連続準優勝だ。またオレは今日から今の自分を超えていくために頑張る。そして、今日はいろいろあったんですよ…。全日本プロレスのみんなは家族なんで、長尾一大心の先輩として恥じぬように、これからも全日本プロレスで生きていきます」